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国やぶれて田中あり

田中兄弟社の兄です

照れてる田中に虫達が くちづけせよとはやしたて

 結婚パーティーによばれなかった話だけは、どうしてもしておかなければいけません。

 弟も、それから太郎ちゃんも、そのパーティーにまねかれていました。
 つまり一門で声がかからなかったのは私だけです。
 強制労働ツアーでおなじみの恩師までもがその場にいらしたそうです。

 私をよばないというのは、いかがなものでしょうか。

 しかしこれはおそらく、田中一門の分断を図る策謀です。
 結婚パーティーからハブられる。そのような目にあえば、この私はどう動くでしょう。
 そこにわだかまりがめばえる。遺恨が生じる。胸のうちにどす黒い雲がわきあがってくる。

 弟と太郎ちゃんを、討つ。

 私は当然のこととして、そのようにかんがえるでしょう。
 事実、この計略に気づくまでは、私の頭の中は弟と太郎ちゃんをなきものにすること一色でした。

 どちらか一方を先に殺める。    怒りにまかせてかるはずみにその儀におよべば、残党たる他方に警戒されましょう。
 さすれば万にひとつ、しそんじる、ということも考えられます。
 それはなりません。断じて一網打尽にせねばなりません。謀反人がのうのうとのさばるようなことが許されてはならないのです。それは世の理、道義に反します。
 天誅それよりほかに道はのこされてはいないのです。

 弟と太郎ちゃんを一挙に討ちとる計画をたてました。
 これを阻むは、ふたりの居城のとおさです。
 太郎ちゃんは都内のいいところ。弟は地の果て、埼玉。
 まずは二人をひとつところにおびきださねばなりません。

 宴を催したところ、ふたりともホイホイと出てきました。
 チョロいものです。私に謀殺されるなどとは微塵もかんがえなかったのでしょう。
 それどころか、おひとよしなことに弟は、アキヨドで私のUSBケーブルをパシるなどしました。ありがとうありがとう。
 これに乗じて太郎ちゃんなどはポイントでこの支払をたてかえ、私からの支払いを受けとるというスキームでポイントを現金化し、その日の飲み代をてにいれるなどしていました。太郎ちゃん、天才かよ。

 めんどくさい酔漢にからまれた一軒目をのがれ、ケバブをかじるなどしながら、私たちは二軒目としていきつけのイタリアンワイン&カフェレストランののれんをくぐりました。
 ここで、弟と太郎ちゃんの首をとる。私はその覚悟をきめていました。

 真イカのパプリカソースをふた皿たいらげ、マグナムワインがはんぶんになったころです。
 おもいがけないことがおきました。太郎ちゃんが具合をわるくしたのです。
 もともと太郎ちゃんは体質的にワインが苦手とのことなのでした。そこへさしてマグナムですから、毒としてからだをめぐってしまうは必定といえましょう。

 私もいささか心配になりました。
 不思議なものです。これから首をはねる相手の体調などどうでもいいはずなのに。くるしむ姿をまのあたりにして、鬼となり身内を斬る決意がゆらいだのでしょうか。
 やがて太郎ちゃんは、トイレにこもってしまいました。

 弟が、心配して様子をみにいきました。
 私はこのとき、一門のふかい絆を感じました。
 そして、すべてが田中一門の力をそごうとする者による謀であったことにきづいたのです。

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 この者どもゆるすまじ。
 ねだやしにしてくれる。